前記事「バツイチがばれた!父の思い出(その1)」からの続きとなります。
今回は父のバツイチがばれた経緯や、生前ばれなかった理由など、具体的にアップしたいと思います。
バツイチがばれた経緯
父が亡くなって2年ほどして、実家の土地・家屋の名義を全て父から母に変更することにしました。
父の相続人は母の他、姉、私、妹の合計4人でしたが、話し合いの結果、子供達は相続放棄することにしました。
この名義変更手続は、私の知り合いの司法書士さんにお願いしました。
このため、必要書類の提出など司法書士さんの対応は、全て私が担当しました。
その後、司法書士さんから手続完了の連絡があり、書類の受け取りや費用の支払いに私のみが伺いました。
書類の一つに「遺産分割協議書」がありました。
今回の手続では、法定相続と異なり母のみに土地・家屋を相続する変則的なものなので、この協議書が必要でした。
この協議書の作成時には、父の相続人を特定するため、父の親の代まで遡って戸籍を調べ、また、普段は見ることのない除籍簿まで調べることになります。
そして、この協議書には相続関係説明図(以下、相関図)が添付されていました。
これは、父の相続人を示すもので、父を中心とした家系図のような書類です。
相関図を見ると、父の名前の左側には二重線で母の名前が繋がり、その下に分岐して姉、私、妹の名前がありました。
しかし、父の右側にも点線で見慣れない名前が繋がっていました。
そして、〇藤〇子(日付や協議離婚など付記)と記載されていました。
これに気が付いた私は、
Σ(゚Д゚;)エッ!
の状態でした。
以下、その時の私と司法書士さんの会話です。
私:「あの~、この方はどなたですか?」
私は司法書士さんに、〇藤〇子のことを尋ねました。
司法書士さん:「あ~、お父さんの前の奥さんですね。でも、離婚が成立しているのでこの方は相続人ではありませし、今回の手続きでも全く問題ありませんでしたよ。」
司法書士さんから、あっさりした回答がありました。
私:「え~と、父はいわゆるバツイチだったということですか?」
司法書士さん:「はい、そうですけど。何か問題でも?もしかして、知らなかったのですか!」
私:「は~、知らなかったです。」
なんだか、間の抜けた会話となってしまいました。
母に確認する前に、父とは兄弟で1番仲が良く、口の堅い妹にこのバツイチの件を聞いてみました。
妹は、「え~マジで!!そんなの知らない!!」と電話の向こうで驚愕していました。
姉にも聞こうかと思いましたが、口が軽いので止めました。
母にはこのバツイチの件は、結局、確認してません。
母はこの6年程後に亡くなってしまいました。
確認しなかった理由は、お手数ですが、前記事「バツイチがばれた!父の思い出(その1)」をご確認ください。
バツイチがばれなかった理由
(1)父が秘密にしていたから
まず、父がバツイチの事実を秘密にしていたことが、第一の理由です。
(2)養子先での結婚と離婚だったから
父の最初の結婚・離婚は、養子先で行われていたからです。
父は、8人兄弟(兄姉)の末子で六男でした。
このため、高校卒業後にある和菓子店の夫婦と養子縁組し、養子先に住み込んで和菓子職人となるべく修行していたのです。
でも、父は4年ほどして養子縁組を解消して実家に戻ってきたそうです。
養父が事業を失敗したのか、和菓子屋が倒産してしまったからだそうです。
父は、実家に戻った後、養子先での出来事をあまり話したがらなかったそうです。
私は、父と一番仲の良かった伯母に養子先での結婚・離婚の件を尋ねてみましたが、伯母もその事実を知らないとのことでした。
ただ、伯母はあまり驚いていませんでしたので、もしかしたら知っていたのかもしれません。
父の実家では、養子先での出来事は黒歴史となっているのかもしれません。
まあ、伯母が知っていたとする証拠もないので、突っ込んで聞くことは止めました。
(3)戸籍の記載
では、母との結婚時の戸籍の記載からばれるのではと考え、確認してみました。
父の戸籍の流れは、以下のようになります。
① B家と養子縁組:A家除籍→B家入籍
② 先妻と結婚 :B家除籍→C家新戸籍
③ 先妻と離婚 :C家新戸籍のまま(先妻のみ除籍)
④ B家と離縁 :C家除籍→A家に復籍
⑤ 母と結婚 :A家除籍→母との新戸籍
とすると、母との入籍時に必要な戸籍謄本には、養子のための除籍・復籍の記録はあるものの、養子先での結婚・離婚の記録はありません。
また、父の死後の必要な手続に用いる改正原戸籍には、そもそも養子の記録さえもありません。
こんなわけで、バツイチをなかった事にする「戸籍ロンダリング」は完成していたのです。
しかし、遺産分割協議書作成時には除籍簿まで遡って調べるため、養子縁組先での結婚・離婚がばれたのです。
(4)距離的理由
バツイチがばれなかったのは、距離的な理由もあると思います。
父の実家住所を基準にすると、養子先住所は北に40km、母と結婚し生活した住所は南に40kmでした。
つまり、養子先との距離は80kmあるので、父が離婚経験者と知る人は、たまたま居なかったのかもしれません。
母は父のバツイチを知らなかったのか?
おそらく知らなかったと思います。
もちろん、父が一時期に他家の養子となっていた事は知っていました。
この養子縁組の話は、私は母から聞かされていたからです。
でも、バツイチの件を聞かされた記憶は一切ありません。
それに、母がバツイチの事実を知っていたのなら、あの性格上、言わずにいられなかったと思います。
この点、私の妻も「あのお義母さんが黙っている訳ないでしょ!」と、激しく同意していました。
もしかしたら異母姉がいるかも
父と先妻の間には、相関図を見る限り戸籍上の子供はいませんでした。
ですが、私は以下の理由から、異母姉がいるかもと勝手に思っています。
(1)父の消息を尋ねる電話
土地・家屋の名義変更が終わった2~3月後に、実家にある電話がありました。
それは、父の消息を尋ねる中年位の女性からのものだったそうです。
電話に出た母は、既に亡くなっている旨伝え、どなたか、そして、電話の目的を聞いたそうです。
すると、最近になって父が、本当の父親である旨聞いたらしく、1度会いたいと電話したとのことでした。
しかし、既に亡くなった事を知ると、お悔やみを述べて電話を切られたそうです。
母は、「浮気して外に子供を作るような甲斐性は、あのお父さんには無いわ~!」と、笑っていました。
その電話から1月程した後に私が実家に行くと、仏壇には見事な胡蝶蘭が飾られていました。
母に、どうしたのか聞いてみると、
② その女性が胡蝶蘭を仏壇におそなえしてくれたこと、
③ 父との関係は父の会社で新入社員の時期にお世話になったこと、
④ 今は△市に住み、たまたま知人から父が亡くなったことを知ったこと、
とのことでした。
母は、「30年以上前にお世話になっただけで、わざわざ線香をあげに来てくれるとは、今どき律儀な人だわ~!」と、すごく感心していました。
外見も清楚で話しぶりも丁寧だし、とても感じの良い方だったらしいです。
私は、その方の住所が△市であることでピンときました。
その△市は父の養子先です。そして、その女性の年齢も父の養子時期の子であれば、丁度良い具合です。
また、新入社員の一時期にお世話になっただけで、30年あまり後に立派な胡蝶蘭を携えて線香をあげに来るとは、理由としてはちょっと無理があります。
それに、父は人見知りであり、部下とは言え、女性の扱いは得意ではなかったと思います。
これらの点を考慮すると、その女性は父の娘と称したあの電話の主だったのではないかと思いました。
(2)墓が掃除されている
父が眠る墓は、菩提寺の裏山をかなり昇った場所にあり、当時は父しか納骨されていませんでした。
このためか、父の命日、盆、彼岸での墓参りはともかく、墓掃除をする者は私たち夫婦以外にいませんでした。
しかし、この女性の訪問後に私たち以外の誰かが墓を掃除している痕跡がありました。
それは、たまたま父の誕生日に墓参りに行った際に気付いたのです。
父の誕生日は、墓参りシーズンとはずれているため、墓は薄汚れている筈です。
しかし、墓は外柵を含めて綺麗に拭き掃除され、見事な花も飾られていました。
私はびっくりしましたが、なんとなくあの女性ではないかと思いました。
また、命日、盆、彼岸を避けた父の誕生日に墓掃除・墓参りする姿勢に、奥ゆかしさを感じました。
以上の理由で、もしかしたらあの女性は、父の最初の妻との間にできた娘、私にとって異母姉なのかもと思いました。
実姉とは、「成人式の振袖費用を遺産相続で請求された!」でも記したように、母の相続時に若干ながら揉めました。
実姉は、嫁ぎ先の影響か判りませんが、異様にがめつくなったような気がします。
この点、異母姉かもしれない女性は、奥ゆかしさを感じ好感が持てます。
できたら、一度お会いして色々と話してみたいですが、連絡先も判らないので、将来の楽しみにとっておこうと思います。
最後に
父のバツイチの事実を知った時は、私は若干ながら混乱しました。
でも、その事実を聞いたが妻が、「あのお義父さんがね~、見かけによらずやるわね!」との感想を言いました。
私は、「は~、やるわねって!」て、その感想に突っ込みを入れようかと思いました。
しかし、あの母の尻に敷かれっぱなしだった父にそんな秘密の過去があったと思うと、なんだか愉快な気分となり、
「そうだな!親父もやるな~!」と、妻の意見に同意したのでした。
おそらく、父の性格からすると、養子先でも色々と苦労したのかもしれません。
でも、父の人生に釈然としない点があった私は、勝手ながらちょっとだけ救われたような気分となりました。
それは、父にも波乱なエピソードがあり、その人生が少しは彩られていたと思えたからです。
ここで一句、
バツイチの 秘密を胸に 父は逝く
では、また。