男:「この頃、気付いたんだけど、初対面の人に運動音痴だと思われがちなんだけど、なんでかな~?」
女:「それはね、あなたがのび太顔だからよ!」
男:「ん?、意味が判らないんだけど。」
女:「丸いレンズの眼鏡を掛けると、あなたはドラえもんののび太っぽい顔になるのよ!」
この会話は、約3週間後に結婚式を控え、その準備中に私と当時の婚約者(現妻)で交わされたものです。
私:「じゃあなにかい、俺がのび太っぽい顔ってだけで、運動音痴だと思われるのか?」
妻:「だから、そう言ってるでしょ!気付いてなかったの?」
私:「イヤイヤ、気付いていないから聞いたんだろうが、なんだそりゃ~、結構ショック~!」
私は、選抜競争でコケた小学校3年を除き、全学年でリレーの選手に選ばれる程度には足が速かったのです。
また、中学では、3年間野球部に所属し、強肩を買われてポジションはサードのレギュラーでした。
高校では、体育祭で得意な球技であるサッカーで、クラスの学校内の準優勝にも貢献しました。
つまり、周りの同級生には、私はそこそこ運動はできる奴と認識されていたと思います。
記憶を辿ってみると、運動音痴と思われがちになったのは、他県の大学に進学した頃からです。
ちょうど眼鏡をかけ始め、初対面の人と接する機会も格段に増えた頃だと思います。
妻には、「でも、悪い事ばかりじゃ無かったでしょ」と言われました。
確かに、悪い事ばかりではありませんでした。
第一印象がのび太なせいか、ちょっとスポーツで活躍すると、その後の評価がうなぎ登りとなるのです。
悪い人がちょっとでも良い事をすると、凄く良い人と思われるのと、似ています。
以下、複数の事例に分けて紹介します。
1.大学入学当初の事例
大学の一般教養でも体育の授業があり、私は得意なサッカーを選択しました。
授業中のミニゲームや通常ゲームでも、サッカーが得意だったこともあり、アシストや得点を決めました。
もちろん、高校で本格的にサッカーをしていた方々には能力的には劣ります。
しかし、入学して日が浅い同級生達は、
「驚いたよ!」、
「見かけによらないね!」、
「君がサッカーできるとは!」、
「ビックリだよ!」と、
違和感がある褒め言葉を貰いました。
その後、同級生達の私への扱いが明らかに良くなりました。
例えば、それまでは「スポーツが好きなんだ。」と言っても、適当に流されていましたが、話への食い付き方が劇的に変わりました。
ある同級生からは、色々なスポーツ(ソフトボール、テニス、サッカー、スキーなど)を楽しむ運動系サークルに熱心に誘ってもらい、楽しく活動できました。
2.就職後、最初の配属先での事例
大学卒業後に就職した某機械メーカーでは、配属された事業部で新入社員の歓迎ソフトボール大会がありました。
新入社員(女性も含む)を複数チームに振り分けてトーナメント戦を行うのですが、私が振り分けられたチームの先輩方はなんとなく不満気です。
しかし、サードの守備に着き、一度ゴロ処理をしたところ、周囲から大歓声が上がりました。
野球経験者にとっては、たいして難しくもないゴロ処理です。
しかし、周囲の方々からは、
「見かけによらないな!」、
「見直したぞ!」、
「仕事もそれぐらい活躍しろ!」と、
相変わらず違和感のある褒め言葉を頂きました。
その後、諸先輩方から急に飲みに誘われたり、草野球チームに誘われたりし、何かと可愛がって貰うようになりました。
特に良かったのは、総務・庶務の女性からも親しく声を掛けて貰うようになったことです。
そして、備品の発注、会議室や商談ルームの予約、各種事務手続、などでアシストを頂けるようになり、とても助かった記憶があります。
でも、配属当初の私への彼女たちの態度は、けんもほろろな感じでしたが。
3.転勤先での事例
配属から4年後に、関東の北から南へと転勤となりました。
転勤先では、同期の数人を除き、やっぱり初対面の方々ばかりです。
転勤から2月後ぐらいに、事業部内の部署対抗ソフトボール大会がありました。
部署対抗ですので、参加するチームの助っ人には、厳しい規制があります。
例えば、助っ人は1人まで、事業部の野球サークルに所属していないこと、などです。
私は、あるチームのキャプテンから是非にと助っ人を頼まれ、いや命令されました。
その方は、以前に私の所属事業部に長期出張されていた方で、私のことをよく知っていたのです。
ただ、チームメンバーに紹介されると、「なんでこいつなの?」という顔されました。
でも、メンバー達はチームキャプテンの意向に逆らえません。
そして、ゲームが始まり1つのゴロを処理しただけで、またまた大歓声が上がり、違和感のある褒め言葉を頂くことになるのです。
そして、やっぱり総務の女性達に良くして頂けるようになります。
その頃、現妻とは100km以上の遠距離だったため、結婚することにしました。
結婚準備時には、借り上げ社宅や各種手続で総務の女性達からは結構な配慮が頂けました。
4.最後に
このように、私は行く先々での扱いが、スポーツレクリエーション後にガラっと変わることに違和感を覚え始め、文頭の質問を妻にしたのでした。
私は、妻の言うとおり、のび太顔で損をし、その後に大きな得をしてきたので、悪い事ばかりではないと言えます。
でも、逆に言えば、スポーツを披露する機会がなければ、永遠に運動音痴と思われていることになります。
私は、のび太顔である事を認識してからは、努めて横長角レンズの眼鏡、例えるなら「神の雫」の「遠峰一青」のような眼鏡をしています。
しかし、やっぱりのび太っぼさは抜け切れてないのかもしれません。
Uターン後に転職した企業では、スポーツレクリエーションがないため、同僚との会話の端々に「運動音痴なんでしょ!」との印象を持たれている様子が伺えます。
だからといって、口で「運動音痴ではありませんよ!」と言っても、おそらく信じてはもらえないでしょう。
それに、40半ばを過ぎた中年ですので、腰も痛く、動体視力も落ち、加えて飛蚊症では、昔のように動くことも出来ないと思います。
なので、最近は、好きに思ってくれて結構と開き直っています。
ところで、妻に「じゃあ、お前はなんで俺と付き合ったんだ?」と聞いてみました。
すると、「初めて会ったときは、コンタクトレンズだったでしょ!」と答えられました。
そう言えば、すっかり忘れてました。
それにしても、ドラえもんの1キャラクター「のび太」に印象が似ていると言うだけで、初対面の人に運動音痴のレッテルを貼られてしまうとは恐ろしいことです。
それだけ、ドラえもん、いや作者の藤子・F・不二雄先生が凄い方だったと言うことでしょうか。
ここで一句、
のび太顔 損と得とが 入り乱れ
では、また。